紀の川市後田(しれだ)の住宅地で平成27年2月、同市立名手小学校5年生の森田都史君(当時11)が胸などを刃物で刺され殺害された事件の裁判員裁判の判決公判が28日、和歌山地裁で開かれ、殺人と銃刀法違反の罪に問われた同市の無職、中村桜洲被告(24)に対し、浅見健次郎裁判長は懲役16年(求刑懲役25年)の判決を言い渡した。
浅見裁判長は判決理由で、犯行当時の中村被告について「統合失調症ないし妄想性障害による被害妄想の影響により心神耗弱の状態にあった」と認定しながらも、「犯行は執拗かつ残忍。(殺害に至った)その行動は、誠に安易で、生命を軽視したものである」と量刑理由を述べた。
殺害された都史君については、「被害者には何ら落ち度はなく、突如被告人に襲われ、強い恐怖と苦しみを感じながら、11歳の若さでその尊い命を奪われた」とし、「被害者遺族が悲嘆に暮れ、被告人に対し、強い処罰感情を持つのは当然であり、本件各犯行が地域社会に与えた影響も大きい」と述べた。
公判中に二度にわたり犯行を否認するなどした中村被告の態度については、「一応の反省は口にするが、心からなされたものとは到底言えず、人命を奪ったことの重大性をいまだに理解していないと見られる」と断じた。
弁護側は控訴について「本人の意向を聞いて判断したい」とのみ答えた。
閉廷後に開かれた記者会見で、裁判員の一人は「11歳の子が殺された悲しみと、中村被告の心神耗弱の状態と、折り合いをつけるのが難しかった」と審理を振り返り、「認否が二転三転したことに驚いたが、それが精神病に基づくものなのかは分からなかった」と話し、中村被告の精神状態について不明な点が残ることも明かした。