和歌山市水道局発注工事を巡り、便宜を図った見返りに現金30万円の受け渡しがあったとして市職員と業者が逮捕された贈収賄事件で、収賄容疑で逮捕された市水道局給水営業課技術副主査の林克芳容疑者(34)=大阪府東大阪市=の金融機関口座に、業者から現金を受け取ったとされる平成28年1月27日ごろ、原資不明の入金と、その後に入金相応額のクレジット引き落としが記録されていることが分かった。県警が事件との関連を慎重に調べている。
県警によると、贈賄容疑で逮捕され、事件当時は㈱藤本水道の社長だった藤本真司容疑者(36)=和歌山市神前=と林容疑者の2人の出会いは、平成20年前後の市発注の工事現場だったという。その後も、林容疑は市水道局内で勤務し、業務上の交流で、親交を深めていたとみられる。今後、林容疑者を巡る金銭の状態などについて捜査が進められる。
個人の問題との見方も 市は再発防止研修を検討
一般的に贈収賄事件で官民癒着の温床になりやすい入札問題では、工事の見積金額に当たる「予定価格」や、下回ると失格となる「最低制限価格」などについて、和歌山市は事前に公表しているため、情報漏洩の便宜は意味を持たない。同社は近年、市水道局発注工事を28年度に1件、27年度に3件、26年度に1件それぞれ落札しているが、全て予定価格や最低制限価格が公開されており、容疑者2人の癒着による不正入札の疑いはないとみられる。
市は、事件の再発防止を目的とした研修の開催などの検討を進めているが、今回の事件に関しては「個人の資質の問題」という見方も強く、市の今後の対応が注目される。
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今回の事件は、平成27年7月10日に同社が6254万円で落札した「中之島配水管布設替工事」(工期=27年7月16日~28年3月31日)に関し、監理技術者などが常駐することを市との契約で決められていたにもかかわらず、林容疑者は、監理技術者本人が病気を理由に常駐していないことを承認した他、市の抜き打ち検査の予想日を事前に同社側に教えた見返りとして、藤本容疑者から現金30万円を受け取った疑いが持たれている。