風邪薬などに使われるアセトアミノフェン(AA)などを製造している和歌山市の原薬メーカー、山本化学工業㈱(同市舟津町、山本隆造社長)が、無届けで製造過程に中国産のAAを混ぜていた問題で、医薬品医療機器法に違反しているとして、県は28日付で同社を22日間の業務停止処分とした。同日、県庁で山本等士県福祉保健部長から山本社長に対して業務停止命令の通知が手渡された。
県薬務課によると、同社はAAの他、てんかんやパーキンソン病の治療に使われる薬「ゾニサミド」の製造でも、溶媒を無届けで変更していた。
薬の原料や成分を変更する場合、独立行政法人「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」に対して事前に届け出る必要がある。同社は無届けで変更していた上、品質の安定を図るため各社に作成が求められている製造指図書や製造記録に中国産AAの使用を記載していなかった。同社は中国産AAを平成21年から使用しており、出荷の可否を確認する出荷判定も行っていなかった。
5月15日に厚生労働省から同課に情報提供があり、23、24両日に同省と同課、PMDAの職員が抜き打ちで同社を立ち入り検査したところ、違反が確認された。同社は事前通告制でおおむね2年に1回行われる県の立ち入り検査の際は、虚偽の報告を行っていた。製品の質に問題はなく、健康被害が生じる恐れはないという。
県は、無届けによる変更や製造、品質の管理に求められる基準を満たしていないことに加え、立ち入り検査において虚偽の報告を行ったことを理由に、同社を今月29日から7月20日まで22日間の業務停止処分とし、業務改善命令を出した。同社は原因究明や再発防止策を盛り込んだ改善計画書を1カ月以内に同課へ提出することが求められ、同課は受け取った後、抜き打ちで立ち入り検査を実施し、業務再開の可否を決定する。同社は5月24日以降、製品の出荷を自粛している。
県庁を訪れた山本社長に対し、山本部長は「県としても誠に遺憾。使命の重さを自覚し、再出発してほしい」と話した。
報道陣に対し山本社長は、無届けでの原料変更が薬機法違反に当たることを認め、中国産AAを混ぜた動機について「コストダウン」と回答。「薬を使用される皆さんにご心配をお掛けし、深くおわび申し上げる。今後は全社一丸となり、業務や企業風土の改善に努めていきたい」と話したが、詳細に関する質問には「全て私の責任です」と述べるにとどめた。