公立学校共済組合が運営するホテルアバローム紀の国(和歌山県和歌山市湊通丁北)の食材納入を巡る贈収賄事件で、県警は10日夜、同ホテルや県庁南別館の同組合和歌山支部事務所(県教育委員会内)などを捜索し、関係書類などを押収。11日朝には、同ホテル総料理長ら容疑者の身柄を和歌山地方検察庁に送致した。総料理長らと業者との間の賄賂の受け渡しがどのくらいの期間に及ぶかなど、慎重に捜査を進める。
収賄容疑で逮捕されたのは、同ホテル副支配人兼総料理長の佐藤喜久一郎(58)と和食料理長の田村孝一(50)の両容疑者。2人は、贈賄容疑で逮捕された食料品販売会社・㈱宝塚森屋(兵庫県宝塚市旭町)代表取締役の合原浩司(52)と営業二部長の井上元(55)、谷鮮魚店(和歌山市湊)経営の尾﨑洋子(69)の3容疑者から、食材納入の便宜を図った見返りに、ことし1月から8月にかけて合わせて約44万円を受け取った疑いが持たれている。
捜査関係者によると、田村容疑者は同ホテルで扱う和食の鮮魚、佐藤容疑者はその他の和食関係の食材について、納入業者の選定や発注に大きな権限を持っていた。宝塚森屋は10年以上、谷鮮魚店は20年以上、同ホテルと取引があり、県警は、賄賂の受け渡しは過去にさかのぼって複数回行われてきたとみている。
同ホテルの捜索は10日午後7時半過ぎから行われ、段ボール箱を手にした捜査員ら約20人がホテル内に入り、佐藤、田村両容疑者の勤務場所や事務室などを調べた。同7時40分ごろには、同組合和歌山支部事務所にも捜査員が入った。9日には、宝塚森屋や谷鮮魚店などの関係先も捜索した。
11日午前9時ごろには、和歌山西署から佐藤、合原両容疑者、和歌山東署から田村容疑者が身柄を送致された。西署では、先に出発した佐藤容疑者は車の中で頭を伏せ、合原容疑者は顔を正面に向けたままだった。
公立学校共済組合の職員は、地方公務員等共済組合法により「みなし公務員」となるため、収賄罪の適用対象となる。
職員である佐藤、田村両容疑者の逮捕を受け、同組合和歌山支部長である宮﨑泉県教育長は「遺憾なことと真摯(しんし)に受け止めている。しっかりと事実確認を行った上で、再発防止と信頼回復に向けて取り組んでいく」とコメントしている。